タイル
土岐のタイルの原料の作る工場を見学した。
タイル工場の見学はしたことがあるが、その原料を作る現場を見るのははじめて。そもそも原料を作る工場というものがあることすら知らなかった。
瀬戸から美濃にかけて花崗岩が多く、またその風化物である粘土(600万年ほど前の堆積物)も多い。そのような背景があり、この地域では古くから焼き物が作られている。
花崗岩からなる粘土は不純物が少ない良質なものであるが、焼き物にしたときに水漏れを起こしてしまう。そのためにこの地域では釉薬を塗る技術が発達した。
釉薬を施したモザイクタイルが笠原で生まれ、それが美濃焼タイルの礎だと言われている。笠原はかつては茶碗の一大生産地であったが、昭和初期ぐらいからタイル生産へと変わったのである。
モザイクタイルはお風呂や洗面などで使われ、意匠系のタイルの輸出も増えたが、現代では水回りはステンレスや樹脂に代わり、また外装や床の大判タイルが増えたことで笠原のタイルは衰退の一途をたどっている。
工場見学の後、社長さんに笠原にある「モザイク浪漫館」を案内していただいた。ここでは茶碗からタイルまでの歴史を見ることができる。建物の解体時に一つ一つ丁寧に集められたタイルはとても貴重なものばかりである。
国代耐火工業所はタイルの素地を大事にした魅力ある製品を作っている会社だが、かつては様々な釉薬を使った製品を作っていた。
かつては土壁の上にモルタルを塗りタイルを貼っていた。目地もモルタル。ひびの一つも入っていない。
貼り型。タイルを裏面に並べ、紙を貼って壁に貼る。
ワラで荷造り。
建築の設計でタイルを選ぶ場合、意匠性とともに金額でものを選んできた。
600万年ほど前の堆積物である粘土。その粘土を精製し作られた原料。原料をタイルにする工程。
それぞれの作業を行う身近な人々のことを思うと、これまでの物の選び方が正しかったのかと疑う。
半日の見学だったがいろいろ考えさせられた。